本記事にはプロモーションを含む場合があります。各プラットフォームの仕様・規約は 2026年8月15日時点 で公式ヘルプ・公式仕様サイトを実査した内容です。仕様は改定されることがあるため、実際の運用前には各社の最新の公式ページをご確認ください。

「この動画、AIで作られたものなのか判断できない」——そう思ってこの記事にたどり着いた方が多いはずです。先に結論を3つ書きます。

  1. 映像を目で見て確実に見分ける方法は、2026年8月時点では存在しません。効くのは「ファイルに埋め込まれた信号」と「プラットフォームのラベル」の2つで、どちらも目視ではなく機械が読む仕組みです。
  2. 仕組みは2系統あります。Google の SynthID は出力そのものに不可視の電子透かしを入れる技術、C2PA(Content Credentials) は制作履歴を署名付きで持ち回る技術です。役割が違い、片方で足りる関係ではありません。
  3. 投稿する側には、ツール任せにできない手作業の開示が残っています。YouTube はアップロード時の設定項目で自ら申告する方式で、怠った場合の措置も公式ヘルプに明記されています。

以下、判定技術の仕組みから EU AI Act 第50条 の適用範囲までを一次ソースの実査日つきで整理します。収益化条件は AI動画で副業・収益化は現実的か で扱っています。

※ 実測後に更新します(2026-08-15 時点で未検証):本記事は公式ヘルプ・公式仕様サイト・法令ポータルの当日実査に基づくもので、実際の動画を検証ツールにかけた実測結果ではありません。ラベルの見え方や C2PA 情報がアップロード後にどこまで残るかは、検証のうえ追記します。

見分け方は「3つの層」に分かれている

AI生成動画の判定は次の3層に整理すると混乱しません。

何を見るか弱点
見た目指の数、髪の毛、ありえない動き生成品質の向上で年々あてにならない
透かし出力に埋め込まれた不可視の信号対応ツール以外の出力には入らない
来歴署名付きの制作履歴(C2PA)ファイルから分離されうる

視聴者が目にするラベルは、2層目・3層目の信号を読み取った結果か、投稿者自身の申告の結果——つまり判定そのものではなく判定結果の表示です。

SynthID——出力そのものに入る不可視の電子透かし

SynthID は Google DeepMind の技術で、公式ページでは AI を通じて生成されたコンテンツに透かしを入れ識別するためのツールと説明されています(SynthID 公式ページ、8月15日実査)。対応メディアは画像・動画セグメント・音声・テキスト、埋め込み先として Gemini アプリ、音楽生成モデル Lyria、NotebookLM のポッドキャスト生成が名指しされています。画像・動画向けの透かしは切り抜き、フィルタ追加、フレームレート変更、非可逆圧縮といった改変に耐えるよう設計されているとされます。検証ポータル SynthID Detector は公開済みですが、現時点はメディア関係者と協働したテスト段階です。

動画生成AI側では、Google の Veo が全出力に SynthID の電子透かしを入れると公式ドキュメントに明記しています(Veo 3 の使い方と料金)。目に見える方のウォーターマークが外れる条件は別の話なので、透かしが消える条件 と混同しないでください。

いま個人が使える確認手段と、その限界

一般ユーザー向けの窓口は Gemini アプリです。公式ヘルプ「AI 生成の画像、動画、音声を検証する」によれば、ファイルをアップロードし、それが Google AI によって作成または編集されたものかを質問する形で確認します(Gemini アプリ ヘルプ、8月15日実査)。受け付ける条件は動画90秒以内、音声1時間以内、100MB以下です。

同ヘルプは限界も明記しています。透かしが検出されなくても「AI生成ではない」とは言えません。他のAIシステムで作成された可能性、編集部分が小さすぎる場合や詳細情報がない場合に判断できないことがある、と書かれています。分かるのは Google のモデルで作られたか編集されたかまでで、それ以外の動画生成AIの出力について SynthID は何も言いません(顔ぶれは 動画生成AIおすすめ比較 を参照)。

C2PA(Content Credentials)——コンテンツの「履歴書」

もう1系統が C2PA です。公式サイトは、デジタルコンテンツの出所と編集履歴を確立するためのオープンな技術標準を提供する団体だと説明しています(C2PA 公式サイト、8月15日実査)。Content Credentials は、公式サイトの表現ではデジタルコンテンツにとっての「栄養成分表示ラベル」のように機能し、誰でもいつでも履歴を覗けるようにするものです。仕様は実査時点でバージョン 2.3、運営委員会には Adobe、Amazon、BBC、Google、Meta、Microsoft、OpenAI、Sony、TikTok などが並びます。プラットフォーム側とツール側が同席していることが、後述する情報継承の前提です。

SynthID との違いは一言で整理できます。SynthID は出力の中に信号を混ぜ込む方式で、圧縮や形式変換を経ても残るよう設計されている代わりに Google 製モデル限定。C2PA はファイルに署名付きの履歴書を添付する方式で、撮影や編集も記録できる代わりに剥がされうる、という関係です。

弱点は公式FAQにあります。マニフェストは通常アセットに埋め込まれるものの 分離されうると明記され、対策として不可視の電子透かしやフィンガープリンティングによる durable credentials に触れています(C2PA FAQ、8月15日実査)。一方で改ざん耐性は明確で、アセットやメタデータに手が加えられると暗号ハッシュと署名が無効化され検出可能になるとされています。「履歴が付いていれば内容が真実」ではなく「付いている履歴が改ざんされていない」ことを保証する仕組み、と理解するのが正確です。

YouTube の「このコンテンツの作成手段」——ラベルの実物と付き方

YouTube 公式ヘルプによれば、開示情報は 動画プレーヤーまたは説明欄に表示されます(YouTube ヘルプ、8月15日実査)。説明欄を開くと「このコンテンツの作成手段」というセクションが現れ、そこで詳細を確認できる作りです。同ヘルプが挙げているラベルのひとつが 「AI 生成」 で、動画に含まれているコンテンツが大幅に改変されたか合成によって生成されたものであることを示すとされています。

同じページには C2PA との連携も書かれています。C2PA バージョン 2.1 以降の技術規格に準拠した Content Credentials データがツールまたはクリエイターによって埋め込まれていた場合、YouTube はその情報を継承して開示するという説明で、開示には情報を検証した署名機関の帰属情報が含まれることがある、とも記載されています。

つまり YouTube のラベルには、投稿者の申告に由来するものと、ファイルに埋まっていた C2PA 情報に由来するものの2系統があり、どちらの経路かは署名機関の帰属表示の有無が手がかりになります。

逆向きの表示もあります。ヘルプ「YouTube での信頼の構築:『カメラで撮影』の開示」は、これをクリエイターが特定のテクノロジーを使って動画の出所を確認し、音声や映像が改変されていないことを証明するものだと説明しています(YouTube ヘルプ、8月15日実査)。付与条件は C2PA サポート(2.1 以降)が組み込まれたツールでの撮影で、同ヘルプは具体的な機種名や提供地域を挙げていません。なお、動画生成AI側の規約が C2PA に言及していても必ず信号が入るとは限りません(Higgsfield の安全性・評判 に規約例)。

TikTok と Meta のラベルはどう出るか

TikTok は2024年5月9日の公式発表で、他のプラットフォームで作成された AIGC(AI生成コンテンツ)にも自動でラベルを付ける取り組みを公開しました(TikTok Newsroom 日本語版、8月15日実査)。C2PA の Content Credentials 機能を動画プラットフォームとして初めて実装したとしており、対象は発表時点で画像と動画、音声のみは後日適用予定です。投稿者側については、コミュニティガイドラインが、AIを使ったコンテンツや人物・シーンを本物のように見せるために大幅に編集したコンテンツにはラベルを付ける必要があると定めています(TikTok コミュニティガイドライン、8月15日実査)。

Meta は公式発表で、業界標準のAI画像インジケーターを検出した場合、または投稿者がAI生成コンテンツをアップロードすると申告した場合に、より広い範囲の動画・音声・画像へ「AI info」ラベルを付け始めると述べています(Meta 公式発表、8月15日実査)。同ページの更新履歴によれば、AIツールで編集・加工されただけと検出したものはラベルが投稿のメニュー内に移され、生成されたと検出したものには引き続き表示したうえで、業界共有シグナルによるものか自己申告によるものかが示されます。対象は Facebook、Instagram、Threads です。

視聴者向け——いま効くサインと、もう効かない方法

いま効く手がかりは4つです。

  1. 説明欄の「このコンテンツの作成手段」を開く。プレーヤー上にラベルが出ていなくても、説明欄側にだけ表示されることがあります。
  2. 署名機関の帰属表示があるか見る。帰属情報が付いていれば、自己申告ではなく C2PA データの継承によるものだと分かります。
  3. Gemini アプリに投げて SynthID を確認する。Google のモデル由来かどうかだけは分かります。長尺は該当箇所を切り出す必要があります。
  4. 元の投稿元をたどる。C2PA マニフェストは分離されうるので、再アップロードや画面録画を経た動画では履歴が失われがちです。

逆に、もう効かない方法もはっきりしています。指の本数や手の描写は画像生成初期の手がかりで、現行の動画生成モデルでは決め手になりません。「透かしがないから本物」という判断も、公式ヘルプが明記しているとおり成り立ちません。ラベルがないことも根拠になりません——申告されず信号も剥がれていればラベルは付かないからです。画面録画や再エンコード後のファイルで C2PA が見つからないことにも、意味を読み取るのは困難です。できるのは複数の手がかりを重ねて確度を上げることまでで、現時点で「確実に見分ける」と言い切れる方法はありません

投稿者向け——どこで何を開示するか

YouTube:アップロード時に自己申告する

YouTube 公式ヘルプ「生成 AI コンテンツの使用に関する開示」によれば、開示は投稿時の [属性] セクションの [AI の使用] で行います(YouTube ヘルプ、8月15日実査)。同ヘルプは開示が必要な例として、AI生成の音楽、実在する場所に映像を追加したもの、実際には言われていないアドバイスを言ったかのように見せるものを挙げ、不要な例として非現実的な内容、美顔フィルタの適用、字幕の作成を挙げています。開示を怠った場合については、YouTube 側でラベルが手動適用されたり、コンテンツの削除や YouTube パートナープログラムへの参加停止といったペナルティが発生する可能性がある、と記載されています。

TikTok と Meta も前章のとおり申告と自動検出の併用で、自動検出があるから申告しなくてよい、という建て付けにはなっていません

ファイル側に信号を持たせる選択肢

プラットフォームの申告項目とは別に、アップロード前のファイル自体に開示情報を持たせる手もあります。この用途のツールに DiscloseTag があります。公式サイトの記載では、画像には XMP タグ、動画にはコンテナタグを書き込み、可視の開示ラベルを画像に描き込む機能も提供されています。処理はブラウザ内で完結しファイルはアップロードされないと明記されています(2026年7月28日確認)。

ただし境界があります。ファイルにタグを書き込むことと、YouTube の [AI の使用] 設定で申告することは別の行為です。前者を済ませても後者は必要で、そのタグをプラットフォームがどう読むかはツール側が保証できる領域ではありません(商用案件の納品条件は 商用利用できる動画生成AI)。

EU AI Act 第50条は誰に適用されるのか

2026年8月2日、EU AI Act(規則 (EU) 2024/1689)の透明性義務を定めた 第50条が適用開始となりました。「AI生成物に機械可読なマーキングが義務化」と紹介されていますが、適用範囲を確認せずに読むと誤解します。

まず、これは EU の規則です

本節は EU 域内を適用範囲とする規則の話であり、日本国内の投稿者に一律で適用されるものではありません。日本の投稿者に実務で直接効くのは、前章までの各プラットフォームの規約のほうです。

規則第2条が挙げる適用対象は、(a) EU 域内で AI システムを市場に投入する提供者(所在地は問わない)、(b) EU 域内に拠点があるまたは所在する利用者(deployer)、(c) 第三国に拠点があっても AI システムの出力が EU 域内で使用される場合、です(EU AI Act 第50条、正文は EUR-Lex、8月15日実査)。加えて欧州委員会の公式FAQは、自然人が私的な立場で AI を使う場合——例としてディープフェイクを生成しソーシャルメディアで拡散する行為が挙げられています——は個人的な活動とみなされ、AI Act の適用範囲から除外されると述べています(欧州委員会 FAQ、8月15日実査)。

義務の中身と、かかる相手

条項義務の内容誰にかかるか
第50条2項合成の音声・画像・動画・テキストを生成するAIの出力を、機械可読な形式でマーキングし、人工的に生成・改変されたものとして検出可能にする提供者(ツールを出す側)
第50条4項ディープフェイクを構成する画像・音声・動画を生成・改変したら開示する利用者(deployer)
第50条5項上記を、遅くとも最初の接触の時点で、明確かつ判別可能な方法で提供する1項〜4項の対象者

4項には例外があり、明らかに芸術的・創作的・風刺的・フィクション的な作品の一部であれば、義務は作品の表示や鑑賞を妨げない方法での存在開示に限定されます。

罰則と遡及適用の有無

制裁金は第99条4項(g)に規定があり、第50条の透明性義務違反は、最大 1,500万ユーロ、または事業者の場合は前会計年度の全世界年間総売上高の3%のいずれか高い方の行政制裁金の対象です(EU AI Act 第99条、8月15日実査)。第99条6項により、中小企業(SME)は割合か金額のうち低い方が上限になります。

遡及適用については、同じFAQが2026年8月2日より前に生成されたコンテンツを遡ってラベル付けする必要はないと明記しています。欧州委員会は「Code of Practice on Transparency of AI-generated Content」も公開し、参加は任意である一方、第50条の要件そのものは法的義務としています(欧州委員会 公式ページ、8月15日実査)。

よくある質問

Q1. AI生成動画かどうかを100%判定できるツールはありますか。

2026年8月15日時点ではありません。SynthID は Google のモデル由来かどうかしか判定材料になりませんし、C2PA の履歴は分離されうるため、加工を経た動画では手がかりが残っていないことがあります。

Q2. 日本の個人投稿者は EU AI Act の表示義務を守る必要がありますか。

日本国内での個人投稿に、EU AI Act 第50条が一律で適用されるわけではありません。規則第2条の対象は、EU 域内で市場投入する提供者、EU 域内に拠点があるまたは所在する利用者、第三国にいても出力が EU 域内で使用される場合です。加えて欧州委員会の公式FAQは、自然人が私的な立場でAIを使う行為を適用範囲外としています。日本の投稿者が実務で守るべきは、まず各プラットフォームの規約です。

Q3. C2PA が付いていれば、その動画は本物だと言えますか。

言えません。C2PA が保証するのは付いている履歴が改ざんされていないことであって、映っている内容が現実だということではありません。逆に C2PA の履歴に「AIで生成した」という記録が入ることもあり、その場合はAI生成であることを証明する履歴として機能します。

まとめ

  • 材料は SynthID の不可視透かしC2PA の署名付き履歴、そしてそれを読み取ったラベル。前者は Google 製モデルの範囲、後者は分離されうるという穴があり、重ねても確実には届きません。
  • 投稿する側は、ファイル側の信号とは別にプラットフォームでの自己申告が必要。YouTube では [属性] の [AI の使用] がその場所です。
  • EU AI Act 第50条は2026年8月2日適用開始ですが、適用範囲は EU 域内が軸で、日本の個人投稿者に一律で及びません。